放浪記

LightManの放浪旅行記。東西南北ふらふらと。

太陽を追いかけた話

この記事は

 5月にバイクのラリーイベントに参加した話。太平洋側から、日本海を望む石川県千里浜まで、所定の地点を経由しながら日の出から日没までに到達することがルール。昨年故障しまくって長距離は何かと鬼門だった鳥男で挑んだ片道550km。(107文字)

SSTRとは

 今回参加したのはSSTRというもの。主催が風間深志さんと言う方で、バイクでエベレスト登山や南極横断を果たした日本が誇る“バイクに特化した”冒険家である。

 SunriseSunsetTuringRallyの略で、冒頭でも話した通り南は太平洋側から(太平洋側からならどこから出発しても良い)北は日本海に面する石川県千里浜のゴールまで、日の出から日没までに所定の地点を経由しながら到達するイベントであった。所定の地点では3~1ポイントのポイントを獲得でき、千里浜のゴールまでに15P以上を稼がなくてはならない。(高ポイントが偉いわけではない)だいたいのポイントが道の駅やその街の名勝だったりするのでオモシロい。写真は岐阜県戸隠神社。

 
 
 
 
 
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 ゴールの千里浜は、日本唯一の車で走れる砂浜道路。潮の満ち干によって走行可否は変わるが、運が良ければゴール時に沈む夕日を見ながら砂浜を走れるというなんともドラマチックなイベントなのである。

初参加

 遡ること2月上旬。なまはげみたく何となくバイクのイベントはねえがぁとか探してたらこのイベントを見つけて。恥ずかしながら今年が10回目の開催にもかかわらず全く聞いたことがなかったが、沈む夕日をバックにバイクが砂浜を駆け抜けるポスターがカッコよすぎて軽い気持ちで参戦を決意。よく箱根を走るバイク友達を誘うとその場でOKが出た。

 参加日を選ぶに際し、基本土日休みの我々はゴール後石川に泊まることに。で土曜日の枠は5月の21日か28日のどちらかで、ゴール時に沈む夕日を見れる日に走りたかったが当然3か月先の天気なんざ判るわけがない。結局、私が21日に出勤の可能性があったので28日に申しこんだ。

 するとどうだ。21日の枠が人気すぎて、当初制限されていたエントリー人数が増枠され始めた。大衆心理ではないが、初参加。参加日チョイスミスったかなーとか思っていた。

準備が8割

 とは言え賽は投げられたのだから動くしかなくて。ゴールまでに15ポイントを稼ぐ道筋を二人で考え、絶対に通らなくてはならないスポットを含めながらなんとか16ポイント稼げるルートが完成した。

 しかし、である。参加証代わりのゼッケン(各自番号がふってある)が届き、なんとなくエントリーしたイベントが急に現実味を帯びてくる。過去の参加者のリザルトを確認していると、最高獲得ポイントが100を超えてる猛者(その方は男性。ちなみに女性ライダーの最高は50くらい)や屋久島や宮古島から参戦している猛者など、参加者の熱意をギンギンに感じるうちに「初参加だけど16ポイントで満足してええんか?」とか自問するようになって。そんなこんなで5月21日が来た。

 21日はまさかの悪天候で。どうやら沈む夕日は見れなかったのだそう。自分は次週の出走。もし夕日を見れなかったら...だったら夕日を見れなくても満足できる“過程“にするしかない。そう思って出走1週間を前にルートをいちから組みなおすことを決める。コンセプトは、無理せず、でも動線上にあるスポットは全部行くという単純なもの。マメな友人にコマ図を組みなおしてもらった。

来た、見た、勝った

 朝4:00。4:37の日の出を前に、鳥男で御前崎に向かう。4:30過ぎに集合場所にやってきた遅刻魔の友人と、これから起こる13時間(19:00でゴールが閉まる)に期待と不安に昂りながらスタート。

 前日までの雨がウソのように、東海・甲信越・北陸は晴れ。無事バイクも止まることなく、555㎞で63ポイントを獲得し走り切った。朝に御前崎でおはようと告げた太陽が、千里浜に沈んでいく。念願の夕日を拝むことが出来たことは言うまでもない。本当に運に恵まれ、SSTRというイベントをしゃぶりつくした、濃い一日だった。

 
 
 
 
 
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 しかし実はゴール後、疲れなのかどうしようもない虚無感に苛まれて。初参加にしては中々の高得点だったのは事実だろうが、達成感は一瞬でただただ「あ、終わったな」って感じだった。今思うのはゲームや恋愛みたく、クリアするまでが一番面白いってことだったのかなと。道中でバイクが故障しないか、事故に合わないか、そもそもその日は晴れなのか...。結果は一瞬だからこそ、その“過程“が面白い。

来年も

 あれから早2か月、SSTR行ってよかったと思うことばかりである。いろいろあるが、一番大きいのは各地に住むバイク乗りの友人が増えたことだ。どんな気持ちでそのバイクに乗って、どんな旅をして今千里浜に居るのか。年齢・性別・乗ってるバイク・出発地や帰るところそれぞれ違えども、あの日同じルールの中で走り同じゴールの景色を見たという共通の経験は不思議な連帯感をもたらしてくれている。

 In to the wildという映画で一人アラスカに籠った男が残した「幸福が現実となるのはそれを誰かと分かち合った時だ」という言葉を思い出した。今年参加した人も、次は参加しようという人も、また千里浜で会いましょう。

最後に

 歓喜余ってた叫んでしまいインカムつけてた友人にはキレられたが、千里浜につく直前の白尾ICに出て視界に渚が飛び込んできた時、そして沈む夕日を見ながら、それぞれの旅を終えたバイク乗り達と千里浜を走ったあの光景は、永らく忘れることはないだろう。

 晴天をくれた運に、無事故に、運営に、頑張った鳥男に、感謝である。