放浪記

LightManの放浪旅行記。東西南北ふらふらと。

芸術づくしの週末を過ごした話

こっちにいて感じること

 イングランドにいて、所謂芸術と呼ばれるものに多くの人が関心を持っているということに気が付いた。これはハードとソフトどっちもが要因と思われる。

 

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 例えば一番身近な芸術を感じられる場所:博物館は、多くの人が関心を持っているし(ソフト面)、多くが常設展は無料なのである(ハード面)。そしてそれが博物館に留まらないということを知った週末だった。というわけで、いつものコーナー。いつまで新年ムードを引きずっているのかと思われそうだが。

Lightmanの2020年最初の週末

4日土曜日

 N爺に連れられてモンマスの別荘へ。お決まりのフィッシュアンドチップスの夕食を早々と済ませ、向かった先は街の小さな映画館。本当に規模が小さく、スクリーンはたったの2つ。ところが「MerlinCinemas」という団体に加盟していて、通常のCinema(例えば今だったらジュマンジとか)の他にBeamed Theatre(劇場の演目、例えばバレエやオペラ、オーケストラなどの映像版)やEvent cinema(所謂名作)の上映がある劇場だった。

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To watch "Andre Rieu" #andrerieu #monmouthcounty #70yearsyoung

 今回は『Andre Rieu-70 years young』というBeamed Theatreを観た。券を買う前にN爺に「クラシック音楽は普段聞くか」と聞かれたが、嗜む程度でそんなにガンガン聴いているわけではなかった自分には正直楽しめるのか自信がなかった。Andre Rieu(日本ではアンドレ・リュウと書くそうな)なんて聞いたことない名前だし、そもそもバイオリニストの名前なんてヨーヨーマぐらいしか知らない(ヨーヨーマはチェロ奏者)し、大丈夫なのかとか開演前は思っていた。

 しかし始まってみるとどうしたらことか。楽しいのだ。音楽を聴いて楽しいというのも変な話だが、そのアンドレの70年の人生を振り返っていくつかのコンサートを映像で観ていったのだが、それが今まで知っていたクラシックコンサートではないのだ。映像内の会場の観客は皆飲めや歌えやで誰もじっと聞いていない。体を揺らしたり、歓喜余った人達は通路に出て踊ったり。仕舞いには映画館の観客まで拍手したり歌ったりする始末。過去にオペラやコンサートは行ったことがあるが、印象は緊張そして静かであり鼻をかむことすら憚られる感じだった。これは新しいクラシックの形だなと思って感心しながら、楽しむことが出来た。

5日日曜日

 朝はモンマスの教会でミサ。その後N爺の上の娘が住むダドリーへ移動。舞台を見るためだ。で向かった先はなんと教会。日本で舞台を見るためにお寺に行くというのは考えられない(最近ではお寺でバンドとかはあるらしいが)ので教会の懐の広さを見た気がした。寺と公民館が一緒になったような、いつも言うけど教会は本当に優秀な地域コミュニティのハードだと思う。

 で肝心の演目はというと、キリスト誕生の話だった。キャラクターは羊飼い役2名、天使役2名、ローマ皇帝ヘロデ役とその助手役、賢者役3名という豊富なキャラクター。しかもすごいのはそれらをたった4人の演者が演じ分けているという点。所謂パントマイムと言われるやつだ。一幕二幕の2時間、セリフを飛んだり間違えたりすることなく演じ切るのだからプロの役者とは大したものである。

 子供から大人まで、声を出して笑ったり時にはブーイングをしたり(ヘロデ王は悪者なので登場する度にブーイングされてちょっと可哀そうだった)、前日のオーケストラ同様参加型のイベントだったので楽しかった。ちょこちょこ入る歌がクイーンだったり、「Strictly Come Dancing」の小ネタが入っていたりとThis is very Englishな舞台だった。

最後に

 今日本でも終活(これから僕がする就活とは違う)ブームとか言われて、葬式の見積もりとか事前相談とかやっているみたいだけどなんか違うなーって感じがする。N爺曰く教会にお金は納めているものの教会側からの強制ではないし、日本の檀家料のように額が決まっているわけではなくそれぞれの家庭で金額が違うんだと。

 あくまで形式にこだわってお金って部分が浮き彫りになった日本と、亡くなった人を忘れないってポリシーを貫くイングランド。白洲次郎に倣い「戒名不要」で行こうと思っている僕にはあまり縁がない世界だとは思うのだけど。